PCB調達ガイド

電子製品のラベリングと
取扱説明書作成の実務

CE・FCC・PSE・技適など10種類の認証マーク要件、ラベル設計の4原則、取扱説明書の必須項目と多言語対応、規制別の要件、マニュアル作成7プロセス、デジタル化トレンドを網羅した実務ガイドです。

CE / FCC / PSE / 技適 約8分で読めます 規制別要件・作成プロセス付き

この記事では、ラベルの必須項目と主要認証マーク10種(POINT 01)、ラベル設計の4原則(POINT 02)、取扱説明書の必須項目・安全情報・多言語・フォーマット(POINT 03)、規制別の要件(POINT 04)、マニュアル作成7プロセスとデジタル化トレンド(POINT 05)を解説します。

POINT 01

ラベルの必須項目と主要認証マーク10種

ラベルに表示される一般的な情報

製品名・型番 製造者・販売者情報 製造番号(シリアル番号) 定格情報(電圧・電流・消費電力・周波数) 安全情報(注意・警告マーク) 認証マーク 原産国 廃棄方法(WEEEマーク等) QRコード(マニュアルへのリンク等)

各国・地域の規制に応じて必須項目が決まっています。販売対象国を確定した上で、ラベル設計を開始してください。

主要認証マーク10種

欧州経済領域(EEA)
CE
Conformité Européenne

EEAで販売する製品に必須。EMC・LVD・RoHS・RED等の指令への適合性評価とDoC(適合宣言書)作成が必要。マークのサイズ・比率・配置に厳格な規定あり。「China Export」との混同に注意。

米国
FCC
Federal Communications Commission

米国向け製品に必要。Class A(産業用)とClass B(家庭用)で要件が異なる。意図的な電波放射機器にはFCC IDが必須で、ラベルに表示が必要。

日本
PSE(◇/○)
電気用品安全法マーク

菱形(◇)は特定電気用品:第三者検査必要。丸形(○)は特定電気用品以外:自主検査可。電気用品安全法対象品目はいずれも販売前に取得必須。

日本(無線機器)
技適マーク
技術基準適合証明・工事設計認証

無線機能を持つ機器(Wi-Fi・Bluetooth・LTE等)に必要。技適マークと認証番号をラベルまたは電子的表示で表示。未認証機器の使用は電波法違反。

中国
CCC
China Compulsory Certification

中国強制認証マーク。中国市場向け対象品目に必須。認証取得後、製品にCCCマークを表示。認証維持のための年次監査が必要。

韓国
KC
Korea Certification

韓国の電気機器認証マーク。電気용품 및 생활용품 안전관리법(電気用品及び生活用品安全管理法)に基づく。

台湾
BSMI
Bureau of Standards, Metrology and Inspection

台湾の電気機器認証マーク。経済部標準檢驗局(BSMI)が管轄。台湾市場向けの電気・電子製品に必要。

オーストラリア・NZ
RCM
Regulatory Compliance Mark

オーストラリア・ニュージーランドの電気安全・電磁両立性の認証マーク。旧C-TickとA-Tickが統合されたマーク。

英国
UKCA
UK Conformity Assessed

英国のEU離脱後の独自マーク。CEマークの代替として英国市場向けに使用。移行措置の期限に注意が必要。英国向けにはDoC(UK)も必要。

欧州中心(廃棄)
WEEE
Waste Electrical and Electronic Equipment

×印付きゴミ箱マーク。電子機器廃棄物の適切なリサイクルを促す表示。EU・UK等で義務付け。一般ゴミとしての廃棄を禁止していることを示す。

認証マークの「中国輸出(China Export)CE」との混同注意: 「CE」と書かれたマークでも、欧州CEマークと外見が似た「中国輸出マーク(China Export)」が存在します。正規のEU CEマークは字間が規格で定められており、中国輸出マークとはプロポーションが異なります。ラベル設計時は欧州委員会が公開する正規データを使用し、中国輸出マークと混同しないよう注意してください。
POINT 02

ラベル設計の4原則

ラベル面積は限られています。規制要件を満たしながらも、視認性・耐久性・多言語対応を確保するための4原則を押さえてください。

01 — PRIORITY
情報の優先順位
認証マーク → 定格情報 → 安全警告マーク → 製造者情報 → シリアル番号の順で優先します。面積が限られる場合は必須項目を先に確保し、任意項目をQRコードやオンラインに移行する方法も有効です。規制で指定された最小サイズを必ず守ってください。
02 — VISIBILITY
視認性
文字サイズ・色コントラスト・フォント選定が視認性に直結します。白背景に黒文字(または背景との高コントラスト)が基本です。規制で最小フォントサイズが指定されている場合はそれを遵守。重要な安全情報は、製品の通常使用時に自然に目に入る位置に配置します。
03 — MULTILINGUAL
多言語対応
販売対象国に応じて必要言語でラベルを作成します。EUの場合、加盟国の公用語の一部をカバーすることが求められます。安全情報は全販売対象国の言語で表示するのが原則です。限られたスペースでは、ピクトグラムの活用や言語ごとの補足ラベルの貼付も選択肢です。
04 — DURABILITY
耐久性
ラベル素材は使用環境に応じて選定します。屋外用・高温環境・湿気の多い環境にはPETフィルム等の耐候性素材を使います。貼付方法(粘着・直接印刷・レーザーマーキング)の選択も重要で、剥がれや摩耗による情報消失は規制違反となります。産業機器には金属プレートのレーザー刻印も有効です。
⚠ ラベルが剥がれた場合の規制リスク:販売後のラベル剥離・文字消失は、消費者の安全に関わるだけでなく、規制違反として市場回収(リコール)の対象になる可能性があります。量産前に「テープ剥離試験」「摩耗試験」「耐水試験」などのラベル耐久性試験を実施し、想定使用環境での長期信頼性を確認してください。
POINT 03

取扱説明書の必須項目・安全情報・多言語・フォーマット

取扱説明書(マニュアル)の必須項目

製品概要と仕様
安全上の注意(「警告」「注意」「危険」の区分)
使用方法(基本操作・応用操作)
設置・取付方法
メンテナンスとお手入れ
トラブルシューティング
保証情報
廃棄方法
製造者・サポート連絡先
認証情報・規制対応情報
ライセンス情報(OSS等)
Declaration of Conformity(DoC)

安全情報の記載方法(ISO 3864 / ANSI Z535準拠)

安全情報は、危険の重大性に応じて「危険(DANGER)」「警告(WARNING)」「注意(CAUTION)」の3段階に分類します。ISO 3864とANSI Z535は安全シンボルと色分けの規格で、これに準拠することで直感的に危険度が伝わります。

3段階の安全アラート:
🔴 危険(DANGER) — 回避しなければ死亡または重傷が避けられない切迫した危険な状況
🟡 警告(WARNING) — 回避しなければ死亡または重傷に至る可能性がある危険な状況
🟠 注意(CAUTION) — 回避しなければ軽傷または中程度のけがに至る可能性がある危険な状況
ただし、安全アラートの定義は規格・地域・製品カテゴリによって異なる場合があります。適用規格を確認の上使用してください。

多言語対応の実務

マニュアルは販売対象国の公用語で作成します(EU:加盟国公用語、米国:英語+必要に応じてスペイン語、日本:日本語など)。翻訳は必ず専門翻訳会社または技術翻訳者を使用し、機械翻訳のみでの提供は避けてください。機械翻訳は下訳として活用し、技術用語の正確性は人間がレビューします。

フォーマット:紙・PDF・デジタルの使い分け

  • 紙のマニュアル(同梱):多くの規制で最低限の安全情報と基本操作の紙同梱が義務付けられている。完全デジタル化前に対象国の規制を確認。
  • PDFダウンロード:詳細マニュアルのPDF配布は現在の標準的な手法。QRコードで製品ページへ誘導する形式が普及。
  • オンラインマニュアル(HTML/ウェブ):更新が容易でバージョン管理しやすい。多言語切り替えも実装しやすい。
  • 動画チュートリアル:複雑な操作の説明に効果的。YouTubeやサポートサイトでの公開が一般的。
POINT 04

規制ごとの要件:日本・EU・FCC・中国

日本
電気用品安全法(PSE)
PSE対象品目では、製品本体にPSEマーク・定格・製造者名・登録検査機関名などを表示する必要があります。取扱説明書には安全上の注意を日本語で記載することが必要です。

無線機能を持つ機器は追加で技適マークと認証番号の表示が必要です。輸入品の場合、輸入業者が届出義務を担います。届出なしでの販売は電気用品安全法違反となります。
PSEマーク技適マーク日本語マニュアル輸入業者届出
EU
EU指令(CE / UKCA)
CEマークを表示する製品には、Declaration of Conformity(DoC:適合宣言書)の作成と10年間の保管が義務付けられています。マニュアルには、安全情報・適合指令・製造者情報を記載します。

RED指令対象の無線機器では、無線情報の追加表示が必要です。英国向けにはCEマークに代わるUKCAマークと英国向けDoCが必要です(移行期限に注意)。
DoC(適合宣言書)CEマークRED指令UKCAマーク
米国
FCC(電磁両立性・無線認証)
FCC IDが付与された機器(意図的な電波放射機器)では、ユーザーマニュアルにFCCコンプライアンス声明を記載する必要があります。また、製品ラベルにFCC IDを表示します。

不法な電波干渉や機器への有害な干渉を受け入れる旨の標準的な文言の記載が求められます。Class B機器(家庭用)はClass A(産業用)より厳しい放射限度値が課せられます。
FCC IDFCCコンプライアンス声明Class A / B
中国
CCC認証・GB規格・中文マニュアル
中国市場では中文(簡体字)のマニュアルが必要です。CCC(中国強制認証)対象品目にはCCCマークを表示します。GB規格(中国国家標準)への適合表示も必要な品目があります。

CCC認証には中国認証機関(CNCA指定)による工場審査が含まれ、認証後も年次フォローアップ検査が義務付けられています。認証番号はラベルに表示が必要です。
CCCマーク簡体字マニュアルGB規格年次フォロー審査
POINT 05

マニュアル作成の7プロセスとデジタル化トレンド

マニュアル作成の7ステップ

01
コンテンツ計画
どの情報をどの順序で記載するか計画します。ターゲットユーザー(一般消費者・技術者等)・使用言語・ボリューム・規制要件を整理します。他社製品や類似製品のマニュアルを参照してアウトラインを作成すると効率的です。
02
執筆
技術ライターが正確で分かりやすい文章を書きます。担当エンジニアの監修の下、技術的正確性を担保します。安全情報は特に明確な表現・適切な警告レベルの選択を心がけてください。
03
図・イラスト・画像の作成
イラスト・写真・スクリーンショット・ダイアグラムなどを適切に使用し、文章を補完します。接続図・部品名称図・操作フロー図は文章だけよりも理解度を高めます。イラストは翻訳不要なため多言語対応にも有利です。
04
レビューと修正
エンジニア(技術的正確性)・品質管理(安全情報の網羅性)・法務部門(規制適合性)などによるクロスレビューを行います。この段階でDoCなどの規制文書も並行して作成します。
05
翻訳
各販売対象国の言語に専門翻訳会社または技術翻訳者が翻訳します。機械翻訳は下訳として活用し、必ず人間がレビューしてください。製品固有の専門用語集(グロッサリー)を事前に準備すると翻訳品質が安定します。
06
レイアウトと印刷・デジタル配布
DTPソフト(Adobe InDesign等)でレイアウトを作成し、印刷会社で印刷します。デジタル版はPDF・Webサイト・アプリなどで配布します。QRコードは製品ラベルに印刷し、デジタルマニュアルへのアクセスを提供します。
07
バージョン管理と継続更新
製品の改訂とともにマニュアルも更新します。バージョン番号(例:Rev.1.2)と改訂日を必ず明記し、最新版へのアクセスを確保します。旧バージョンも一定期間はアーカイブとして保管してください。

デジタル化トレンド

近年、紙のマニュアルからデジタル化が進んでいます。ただし、規制で紙の同梱が義務付けられている地域では完全なデジタル化はまだ難しい場合があります。

📱
QRコード+オンラインマニュアル
製品ラベルのQRコードからWebマニュアルへ誘導。更新が容易で多言語切り替えも実装しやすい。最も普及しているデジタル化手法。
🎥
動画チュートリアル
組み立て・設定・操作手順を動画で説明。文章より直感的に理解できる。YouTubeやサポートサイトでの公開が一般的。
🥽
AR(拡張現実)
スマートフォンやARグラスを使って、実際の製品に重ねて手順を表示。産業機器や複雑な設置手順で活用が広がっている。
🤖
AIチャットボット
FAQやトラブルシューティングをAIが自動回答。24時間対応でサポートコストを削減できる。LLMとの統合で精度が向上中。
デジタル化でも「紙」が必要な理由: 多くの規制(特にEU・日本・米国)では「最低限の安全情報と基本操作は印刷物として製品に同梱すること」が求められています。「QRコードだけ」「ウェブマニュアルだけ」という完全デジタル化は現時点では対応できない地域が多く残っています。販売展開前に対象国ごとの紙同梱要件を確認してください。

まとめ

電子製品のラベリングと取扱説明書作成は、各国・地域の規制要件を満たしたラベル設計(認証マークの正確な表示・視認性・多言語・耐久性)、正確で分かりやすいマニュアル作成、専門翻訳会社による適切な多言語化、デジタル化と紙同梱の使い分けを組み合わせることで、グローバル市場での製品展開を支えることができます。規制対応の遅れや誤記は市場回収・販売停止リスクに直結するため、量産前の段階から認証・ラベル・マニュアル計画を並行して進めることが重要です。

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