無線通信機能はIoT機器・ウェアラブル・産業機器など現代の電子製品に不可欠です。自社で無線回路を設計するのは技術ハードルと認証コストが高く、認証取得済みの無線モジュールを使うのが一般的です。この記事では、主要な無線モジュールの種類と選定ポイントを解説します。
この記事では、主要な無線通信規格(Wi-Fi・Bluetooth/BLE・LTE/LTE-M/NB-IoT・5G・LoRa/LoRaWAN・Zigbee/Thread/Matter・Sub-GHz)の特性と用途、主要モジュールメーカー、認証取得済みモジュールの利点、選定基準8項目、設計上の4つの注意点を解説します。
Wi-Fi(IEEE 802.11シリーズ):2.4GHz/5GHz/6GHz帯で動作する高速無線LAN規格です。Wi-Fi 4(802.11n)・Wi-Fi 5(802.11ac)・Wi-Fi 6/6E(802.11ax)・Wi-Fi 7(802.11be)と進化しています。メリットは高速・広く普及・インフラとの互換性、デメリットは消費電力が比較的大きく通信距離が数十メートルに限定される点です。
Bluetooth / BLE(Bluetooth Low Energy):短距離無線通信規格です。Bluetooth Classic(音声・データ転送)とBLE(低消費電力・IoT向け)があります。BLEはバージョン4.0から導入され、現在は5.0以降が主流です。メリットは低消費電力(BLE)・スマートフォンとの互換性・ペアリングのシンプルさ、デメリットは通信距離が短い(10〜100m)・データ転送速度が比較的低い点です。
LTE / LTE-M / NB-IoT:セルラー通信規格です。LTEは高速通信、LTE-M(Cat-M1)とNB-IoT(Cat-NB1)はIoT向けの低消費電力・低速通信です。メリットは広範囲のカバー(キャリアインフラ利用)・高い信頼性・移動中も使用可能です。デメリットは通信料金・SIM契約が必要・消費電力(特にLTE)です。LTE-Mは移動体・音声対応、NB-IoTは固定センサー向きです。
5G:Sub-6GHz帯とミリ波帯で動作する第5世代セルラー規格です。超高速・超低遅延・超多接続を実現します。産業用途・自動運転・AR/VR・リモート医療での活用が拡大中です。一般的なIoTではLTE-M/NB-IoTで十分なケースが多いです。
LoRa / LoRaWAN:サブGHz帯で動作する低消費電力・長距離通信のLPWAN規格です。数km〜数十kmの通信が可能です。メリットは超低消費電力(電池で数年動作)・長距離・ライセンスフリー帯域、デメリットはデータ転送速度が極めて低く・ゲートウェイインフラが必要な点です。スマートシティ・環境モニタリング・農業IoT・トラッキングに使われます。
Zigbee / Thread / Matter:短距離・低消費電力のメッシュネットワーク規格です。スマートホーム・ビル自動化・産業センサーなどに使われます。Matterは2022年に発表されたApple・Google・Amazon・Samsungが共同推進する新規格で、スマートホーム機器の相互接続性を高めることが目的です。
Sub-GHz独自規格:920MHz帯などで動作するWi-SUN・EnOcean・独自プロトコルなどがあります。スマートメーター・産業センサー・ビルオートメーションで使われています。
Wi-Fi/Bluetooth向け:Espressif Systems(中国)のESP32シリーズは圧倒的シェアを持ち価格が非常に安くWi-FiとBluetoothを統合しています。Murata Manufacturing(日本)はNXP・Cypress(Infineon)チップ搭載モジュールで広く使われています。Laird Connectivity(米国)は高品質認証取得済みモジュールで産業・医療市場に強みがあります。u-blox(スイス)は高品質な無線・GNSSモジュールで産業用途に強みがあります。その他、Silicon Labs・Nordic Semiconductor(特にBLE:nRF52/53シリーズ)・Realtek・MediaTek・Qualcomm・Broadcomなどが主要メーカーです。
LTE/セルラー向け:Quectel(中国)は世界トップシェアのセルラーモジュールメーカーで、LTE・LTE-M・NB-IoT・5Gと幅広いラインナップを持ちます。Telit Cinterion(イタリア・ドイツ)は欧州での実績が豊富です。Sierra Wireless(カナダ、現Semtech)は北米での実績があります。その他、Fibocom・SIMCom・Sequans・Nordic Semiconductor(nRF91シリーズ)などがあります。
LoRa向け:Semtech(米国)はLoRa技術の開発元でLoRaチップの主要供給者です。Murata・Microchip・STMicroelectronics・Lairdなどがモジュールを提供しています。
無線モジュールの最大の利点は認証取得の大幅な簡素化です。技適(日本)・FCC(米国)・CE(EU)・CCC(中国)・IC(カナダ)など各国の無線認証は、認証取得済みモジュールを使うことで自社製品の認証取得時に再評価が不要になります。認証コストと時間を大幅に削減できます。
ただしモジュールの認証には条件があります(指定アンテナの使用・モジュール内部の改変禁止等)。条件を満たさない場合、認証が無効になります。認証対象国と条件は必ずデータシートで確認してください。
無線モジュールの選定では、以下の8つの観点から総合的に評価します。
①通信規格:用途に合った規格(Wi-Fi/BLE/LTE/LoRa等)を選びます。②認証:販売対象国の認証取得済みであることが必須です(技適・FCC・CE・CCC・IC等)。③消費電力:電池駆動機器では重要な選定基準です。アクティブモード・スリープモードでの電流値を確認します。④サイズと形状:機器内のスペース制約から選びます。小型SMTパッケージからピンヘッダ付きキャリアモジュールまで様々です。
⑤インターフェース:ホスト(マイコン)との接続インターフェースを確認します(UART・SPI・I²C・SDIO・USB等)。⑥アンテナ:PCBアンテナ(モジュール内蔵)・外付けアンテナ(コネクタ付き)・両対応の3種類があります。設計と配置の自由度に影響します。⑦開発環境:サンプルコード・SDK・ドキュメント・コミュニティの充実度が開発期間に大きく影響します。⑧コストと入手性:単価・ボリュームディスカウント・長期供給保証・現在の在庫状況を確認します。
無線モジュールをPCBに実装する際は、回路設計段階から以下の4点に注意が必要です。
無線モジュールの選定は、通信規格・認証・消費電力・サイズ・インターフェース・コストを総合的に評価することが重要です。認証取得済みモジュールを活用することで自社製品の市場投入を迅速化し認証コストを削減できます。設計段階からアンテナとグラウンドの配慮を行うことが、無線通信品質を確保する鍵です。
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