PCB調達ガイド

偽造部品の検出技術:
詳細手法と判定基準

偽造電子部品は製品の信頼性を脅かす深刻な問題です。本記事では検出技術の詳細と判定基準を技術的な観点から解説します。AS6171規格の体系、外観検査・X線・電気試験・デキャップ・化学分析・音響顕微鏡の各手法、そして検査レベルの優先順位と受入検査の実務を網羅します。

品質管理・受入検査 約12分で読めます 10+検出手法+4段階レベル

本記事は「偽造電子部品のリスクと対策」の技術詳細版です。非破壊検査(外観・X線・電気的)と破壊検査(デキャップ・化学分析)の段階的組み合わせ、AS6171規格の11サブパート、各手法の検出できる偽造タイプ、4段階の検査レベル優先順位と受入検査の実務を体系的に解説します。

POINT 01

検出アプローチとAS6171規格・外観検査の詳細

段階的な検出アプローチ

偽造部品の検出は複数の手法を段階的に組み合わせます。1つの手法だけでは判別が難しいため、複数の証拠を積み重ねて総合判断します。まず非破壊検査(外観・X線・電気的)から始め、疑念が残る場合に破壊検査(デキャップ・化学分析・断面観察)を行うのが基本的な流れです。

AS6171規格の体系

AS6171はSAE Internationalが定める偽造電子部品の検査試験方法に関する規格群です。独立ディストリビューターがAS6081認証を取得する際の検査手法の根拠となります。

AS6171/1:一般要求(検査プログラムの基本要件)
AS6171/2:外観検査(マーキング・パッケージ・寸法)
AS6171/3:X線蛍光分析(XRF:元素組成分析)
AS6171/4:DPA(破壊物理解析)
AS6171/5:放射線検査(X線CT)
AS6171/6:音響顕微鏡検査(C-SAM)
AS6171/7:ラマン分光(樹脂・材料の特性評価)
AS6171/8:FT-IR(フーリエ変換赤外分光)
AS6171/9:熱分析(DSC・TGA)
AS6171/10:電気試験(DC/AC/機能特性)
AS6171/11:デキャップ(パッケージ開封検査)

外観検査:マーキング検査

最も基本的な検出方法です。正規品のマーキングはレーザー刻印または高品質印刷で鮮明・均一です。偽造品の主なマーキング異常として、文字の不鮮明さ・フォントの相違・文字位置のずれ・複数マーキングの重なり(再印刷の痕跡)・マーキングの剥がれやすさ・製造週コードや日付コードの妥当性問題(将来の日付、未稼働期間のコード等)があります。正規品と偽造品を並べて比較することが最も基本的かつ効果的な手法です。

外観検査:パッケージ検査とSEM

パッケージ表面の状態確認では、表面の研磨痕(元のマーキングを削った痕)・塗装やコーティングの痕跡・パッケージの色合いと光沢・ピン(リード)の状態(再メッキの痕・酸化・汚れ)・サイズと寸法の正確性・パッケージ重量をチェックします。リマーク品では表面を研磨した痕跡が見つかることがあります。

光学顕微鏡では見えないミクロンレベルの細部にはスキャン電子顕微鏡(SEM)を使用します。マーキングの刻印深さ・表面の微細な処理跡・リードのめっき品質などを詳細に確認できます。

POINT 02

X線検査・電気特性試験の詳細

2D X線検査

X線でパッケージ内部を透視し、ダイ・リードフレーム・ボンディングワイヤを観察します。検出できる偽造の特徴は以下の通りです。

ダイの有無:空のパッケージ(ダイなし)の検出
ダイのサイズと位置:正規品と異なるサイズ・位置のずれ
ダイの形状:正規品と異なる輪郭・形状
リードフレームのデザイン:構造の相違
ボンディングワイヤ:本数・配置・形状の異常
内部の金属成分:異常な密度分布

正規品のX線画像をリファレンスとして保管しておき、比較することが効果的です。

3D X線CT(Computed Tomography)

複数の角度から撮影したX線画像を3D再構成する手法です。2D画像では見えない3次元の構造を詳細に観察できます。BGAボールの内部構造・多層基板の内層・複雑なパッケージ内部の解析に有効で、2Dで疑義が残った場合の精密検査として使用します。

電気特性試験(DC/AC/機能/温度)

DC特性試験:データシートに記載された基本パラメータ(電流・電圧・抵抗等)を実測。偽造品では基本パラメータすら満たさないことがあります。

AC特性試験:スイッチング速度・周波数応答・ノイズなどの動的特性を測定。データシート値との乖離があれば偽造の可能性が高まります。

機能試験:実際の動作条件での機能を試験します。マイコンの命令実行・メモリの読み書き・通信ICのプロトコル動作など。データシートの仕様と実動作の不一致は偽造の強い証拠になります。

温度試験:温度範囲全体での動作を確認。偽造品は公称の温度範囲より動作範囲が狭いことがあります。特に車載・産業用途では重要な検査項目です。

POINT 03

デキャップ・化学分析・熱分析・音響顕微鏡

デキャップ(開封検査)の3方式

ICのパッケージを開封してダイを露出させる破壊検査です。ロットからサンプルを抽出して実施します。

機械的デキャップ:専用工具でパッケージ樹脂を機械的に削り、リードフレーム部分を残しながらダイを露出させる。比較的シンプルだが、ダイを傷つけるリスクがある。

化学的デキャップ:濃硫酸・発煙硝酸などの強酸でパッケージ樹脂を溶解する。専門的な技術と安全管理(排煙・防護具・中和処理等)が必要。ダイへのダメージが少なく、詳細観察に向く。

プラズマデキャップ:酸素プラズマで樹脂を選択的に除去する方法。化学的より安全で、ダイへのダメージが最も少ない。設備投資は必要だが品質の高いダイ観察が可能。

ダイで確認すること

露出させたダイで確認する内容は、ダイのマーキング(メーカーロゴ・型番・製造週・ロット番号)、ダイのサイズと形状、回路レイアウトの特徴、製造プロセスの世代(露光精度から推測)、リードフレームへのワイヤボンディングです。正規品のダイ写真と比較することで、明確に真贋を判別できます。

化学分析手法(XRF・EDS・FT-IR)

XRF(X線蛍光分析):X線を照射して発生する蛍光X線から元素組成を分析します。リードのめっき組成(スズ・銀・鉛等)、はんだ組成、樹脂中の金属含有量を測定できます。偽造品では、めっき組成が正規品と異なる、RoHS禁止物質(鉛等)が含まれているなどの異常が検出されます。

EDS / SEM-EDS:走査電子顕微鏡(SEM)と組み合わせて特定箇所の元素組成を分析します。XRFより局所的・精密な分析が可能です。

FT-IR(フーリエ変換赤外分光):樹脂やポリマーの化学組成を分析します。パッケージ材料の違いから偽造を検出できます。正規品の樹脂スペクトルとの比較で判定します。

熱分析と音響顕微鏡

DSC(示差走査熱量測定):材料の熱特性(ガラス転移温度・融点等)を測定します。樹脂材料の種類の違いから偽造を検出できます。

TGA(熱重量分析):温度上昇に伴う重量変化を測定します。材料の熱安定性や組成を分析できます。

音響顕微鏡(C-SAM):超音波を使ってパッケージ内部の界面や欠陥を非破壊で観察します。デラミネーション(剥離)・ボイド・クラックなどの内部欠陥を検出できます。リワーク済み(一度実装・取り外しされた中古品)の部品では内部に微細なダメージが残っていることが多く、これを非破壊で検出できる点が特に有効です。

最高度の真贋確認:層削り(Delayering)

最も確実な真贋確認方法です。ダイの各層を順番に削り(層削り)、各層を顕微鏡で観察します。回路の特徴を抽出して正規品との一致を確認します。時間と費用がかかるため通常は専門の半導体解析会社に依頼します。航空宇宙・防衛・医療など信頼性要件が最も厳しい分野で使用されます。

POINT 04

検査レベルの優先順位と受入検査の実務

4段階の検査レベル

すべての検査を実施するのは現実的ではありません。ロットの重要度・部品の用途・調達経路のリスクに応じて適切なレベルを選びます。

L1
必須
外観検査・マーキング検査・寸法/重量確認

すべての受入ロットに必須。正規品サンプルとの比較によるマーキング品質確認・パッケージ表面の研磨痕や塗装痕の確認・寸法と重量の測定。費用対効果が最も高い基本的な検査。

L2
標準
X線検査・電気特性試験

独立ディストリビューターからの調達時・高価部品・車載/医療/産業用途に適用。2D X線でダイ・ボンディングワイヤの正規品リファレンスとの比較。DC/AC特性のデータシート値との一致確認。

L3
疑義時
デキャップ・化学分析・機能試験

L1/L2で疑義が残った場合に適用。サンプルをデキャップしてダイマーキング・回路レイアウトを正規品と比較。XRFでめっき組成・有害物質を分析。実動作条件での機能試験を追加実施。

L4
最終確認
DPA・層削り・リバースエンジニアリング

最も確実な真贋確認が必要な場合(航空宇宙・防衛・医療等)。専門の半導体解析会社に依頼する破壊物理解析(DPA)または層削りによるダイ内部構造の完全解析。

主要検出手法の一覧テーブル

手法種別主な検出対象
外観・マーキング検査 非破壊・目視 リマーク・再印刷・フォント相違・研磨痕
SEM(走査電子顕微鏡) 非破壊・目視 刻印深さ・表面微細処理跡・リードめっき品質
2D X線 非破壊・X線 ダイ有無・サイズ・ボンディングワイヤ配置
3D X線CT 非破壊・X線 内部3D構造・BGA接合・多層配線
音響顕微鏡(C-SAM) 非破壊・超音波 デラミネーション・ボイド・内部ダメージ
電気特性試験(DC/AC) 非破壊・電気 仕様外れ・スペックダウン品・偽グレード
機能試験・温度試験 非破壊・電気 動作仕様の不一致・温度範囲の相違
XRF(X線蛍光分析) 非破壊・化学 めっき組成の相違・有害物質(鉛等)含有
FT-IR / ラマン分光 非破壊・化学 パッケージ樹脂の組成相違
デキャップ(機械/化学/プラズマ) 破壊検査 ダイマーキング・回路レイアウト・ダイサイズ
EDS / SEM-EDS 破壊・化学 特定箇所の局所的な元素組成分析
DSC / TGA(熱分析) 破壊・化学 樹脂材料の熱特性・ガラス転移温度
層削り・DPA 破壊検査 ダイ内部構造の完全解析・最終確認

受入検査の実務:サンプリング・社内vs外注・記録

サンプリング:全数検査は通常困難なため、AQL(合格品質水準)に基づくサンプリング数を決めます。ISO 2859規格に基づくサンプルサイズを使用し、重要部品ではサンプル数を増やすか全数検査を検討します。

社内体制 vs 外注の判断:継続的な大量検査が必要なら社内体制の整備が経済的です。外観検査・電気試験は社内でも対応可能ですが、X線・デキャップ・化学分析などは専門会社への外注が現実的なケースが多いです。専門の検査会社(Smithers Rapra、Element Materials Technology、Acuity Testing等)は高度な機器と経験を持ちます。

重要:記録の保管:検査結果は必ず文書化してください。記録内容:ロット番号・サプライヤー名・受入日・検査日・検査者・検査手法・判定基準・結果(合格/不合格/保留)・写真エビデンス。トレーサビリティの確保は品質管理の基本であり、偽造品被害発生時の証拠にもなります。疑義ロットは隔離してサプライヤーへの報告と返品手続きを進めます。

まとめ

偽造部品の検出は外観検査から高度な化学分析まで、多様な手法を段階的に組み合わせて行います。AS6171規格に基づいた体系的な検査と、部品の重要度に応じた4段階レベルの優先順位付けが、効率的かつ確実な真贋確認の鍵です。L1(外観・マーキング)は全ロット必須、L2(X線・電気試験)は独立ディストリビューターや高価部品に適用、L3(デキャップ・化学分析)は疑義時に実施というアプローチで、コストと品質保証のバランスを取ります。検出技術への投資と社内の知識・スキル向上が、サプライチェーンの信頼性を支える基盤になります。

知識ベース一覧へ
PCB調達ガイド ― 関連記事
  • 中国PCBメーカーの選び方:失敗しない5つのチェックポイント
  • PCB調達コストを下げる方法:相見積もりの取り方と交渉術
  • 多層基板を海外調達するメリットとリスク
  • フレキシブル基板を小ロットで調達する現実的な選択肢
  • PCB調達先を切り替えるときの手順と注意点
  • 中国製PCBの品質は大丈夫か?判断基準と確認方法
  • PCB納期を短縮するためにできること:発注側の工夫
  • ガーバーデータの正しい渡し方:メーカーとのやり取りで困らないために
  • HDI基板の調達ガイド:仕様の伝え方とメーカー選定
  • PCB見積もりの比較方法:単価だけで選ぶと失敗する理由
  • China+1時代のPCB調達戦略:リスク分散と中国メーカーの賢い使い方
  • PCB調達の地政学リスク管理:関税・輸出規制・紛争に備える実務ガイド
  • PCB受入検査の実務ガイド:何をどこまでチェックすべきか
  • PCBA(基板実装)を外注する際の選定基準と注意点
  • 車載向けPCB調達の要件:IATF16949と信頼性試験
  • 医療機器向けPCBの調達:規制・品質・トレーサビリティ
  • PCB基材の選び方:FR-4・高Tg・ポリイミド・セラミックの使い分け
  • PCB表面処理の比較:HASL・ENIG・OSP、どれを選ぶべきか
  • 試作から量産へ:PCB調達のフェーズ別戦略
  • 海外PCBメーカーとの取引実務:契約・決済・物流・通関
  • PCBの価格はどう決まるか:コスト構造の完全解説
  • PCB調達トラブル事例と対処法:品質・納期・コミュニケーション
  • PCB設計でコストと品質を両立するDFMの実務
  • 高周波PCB設計・調達ガイド:5G・ミリ波対応
  • 厚銅基板の調達ガイド:パワーエレクトロニクス向け
  • IoT機器向けPCB調達のポイント
  • 産業機器向けPCB調達:長寿命と信頼性の要件
  • PCB調達の環境規制対応:RoHS・REACH・ハロゲンフリー
  • リジッドフレックス基板の設計と調達ガイド
  • EMS・ODM選定ガイド:電子機器の製造委託をどう決めるか
  • PCB・PCBA発注におけるBOM管理の実務
  • PCB業界のトレンドと今後の調達戦略
  • 電子部品調達の基礎:信頼できるサプライヤーの見つけ方
  • 偽造電子部品のリスクと対策
  • SMTステンシル設計の基礎と調達ポイント
  • BGA実装とリフロープロファイリングの実務
  • コンフォーマルコーティングの種類と選び方
  • PCBAテスト手法の完全ガイド
  • 中国工場監査の実務
  • サプライヤー関係管理(SRM)の実務
  • 電子部品取引のインコタームズ完全ガイド
  • PCB製造のサステナビリティ:CO2削減とグリーン基板
  • ケーブル・ハーネス調達ガイド
  • 筐体・板金加工の調達実務
  • 中国の射出成形メーカー選定
  • EMC/EMI対策の基礎
  • 電子製品の認証取得ガイド
  • リチウムイオンバッテリー調達と安全規制
  • 電源回路の設計と部品調達のポイント
  • スタートアップの電子製品開発:少量からの調達戦略
  • ファームウェアとPCBA製造の連携実務
  • 電子コネクタの選定ガイド
  • マイコン(MCU)選定ガイド
  • センサー調達ガイド
  • ディスプレイモジュール調達
  • メモリ・ストレージ調達の実務
  • モーター・アクチュエーター選定と調達
  • LED・照明部品調達ガイド
  • アンテナ・RF部品の設計と調達
  • 台湾と中国の電子部品調達の使い分け
  • 韓国の電子部品メーカー活用ガイド
  • OEM/ODM契約の実務:知財・品質・責任範囲
  • パワー半導体調達ガイド:SiC・GaNの選定
  • 産業用通信プロトコル選定
  • 電子機器の熱設計と放熱部品の調達
  • 電子部品の静電気対策と包装・取り扱い
  • 半導体・部品不足への対応戦略
  • 機能安全対応部品調達
  • リバースエンジニアリング対策
  • 部品ライフサイクル管理(PLM)の実務
  • 調達DXとAI活用
  • RoHS・REACH対応のワークフロー構築
  • 深圳での電子部品調達ガイド
  • 電子部品の在庫・倉庫管理の実務
  • 電子製品の輸出入実務
  • 電子製品のラベリングと取扱説明書作成
  • 電子製品の組立・梱包工程の標準化
  • 電子製品の環境試験
  • 無線モジュール選定ガイド
  • 回路保護とESD対策部品の選定
  • Should-Cost分析
  • 中国の電子展示会を活用した調達戦略
  • 水晶振動子・発振器の選定と調達ガイド
  • グローバルEMS比較:Foxconn・Flex・Jabil
  • PCBAのリワーク・修理の実務
  • 電子部品データシートの読み方
  • 電子部品調達のフォーキャスト共有とS&OP
  • 電子部品取引のトレードファイナンス
  • サプライヤーの財務リスク評価
  • 電子部品調達の競争入札(RFQ)実務
  • 電子部品の倉庫ロケーション戦略
  • 英文調達書類の実務
  • セレクティブ・フロー半田付けの実務
  • SMT実装ラインの設備調達ガイド
  • サプライチェーンのサイバーセキュリティ
  • 電子部品調達におけるESG対応
  • スマートマニュファクチャリングと電子製造
  • 水素・新エネルギー機器向け電子部品
  • カスタムIC・ASICの調達実務
  • 調達組織とチーム編成の実務

この記事はお役に立ちましたか?

電子部品の品質管理・偽造品対策のご相談は電路計画へ。

電路計画では、信頼できるメーカー正規ルートからのPCB基板調達を一貫してサポートします。独立ディストリビューターを通さない直接調達ルートにより偽造リスクを低減します。取引成立まで費用はかかりません。

調達支援サービスを見る 無料で相談する Quick Choice ― 品質とコストを見直せる高信頼PCBメーカーへ
0

電路計画

〒305-0031 茨城県つくば市吾妻1丁目10−1 つくばセンタービル 1F co-en


contactus@denrokeikaku⁠.jp

株式会社

会社概要

採用情報

暴力団等反社会的勢力排除宣言

プライバシーポリシー

©Denrokeikaku Inc. 2026