PCB実装技術ガイド

セレクティブ・ウェーブ
はんだ付けの実務

SMTが主流になった現代でも、コネクタ・トランス・大型部品・機械的強度が必要な部品ではスルーホールが使われます。ウェーブはんだ付けとセレクティブはんだ付けの使い分け、プロセスパラメータ、品質管理の実務を解説します。

はんだ付け実装技術約8分で読めますIPC-A-610・SAC305・ERSA・Pillarhouse対応

この記事では、ウェーブはんだ付けとセレクティブはんだ付けの特性と使い分け、セレクティブはんだ付けの4方式(ミニウェーブ・ドリップ・ディップ・ロボット)、主要装置メーカー、プロセスパラメータ(フラックス・プリヒート・はんだ温度・接触時間・ノズル)、IPC-A-610品質基準、鉛フリーSAC305対応、不良モードのトラブルシューティング、Industry 4.0対応の自動化まで解説します。

POINT 01

ウェーブはんだ付けとセレクティブはんだ付けの特性と使い分け

① 両方式の特性比較

ウェーブはんだ付け:溶融したはんだの「波(ウェーブ)」の上に基板を通し、基板下面のリードをはんだ付けする方式です(1950年代から使われる技術)。工程はフラックス塗布→プリヒート→はんだ波への通過→冷却です。メリットは複数のスルーホール部品を一度にはんだ付けできる・量産性が高い・工程がシンプル・コストが安い点です。デメリットは基板全体がはんだに接触するためSMT部品やセンシティブな部品に影響・フラックス残渣の洗浄が必要な場合がある点です。

セレクティブはんだ付け:特定の場所のみをノズルから溶融はんだを噴出させて選択的にはんだ付けする方式です。メリットはSMT部品への熱影響を最小化・複雑な基板や高密度実装に対応・フラックス使用量が少なく洗浄が容易・自動化と高い再現性が可能です。デメリットは装置コストが高い・ウェーブはんだ付けより遅い・プログラミングと段取りに時間がかかる点です。

② 使い分けの判断基準

ウェーブはんだ付けが適する場合:スルーホール部品が多い大量生産品(家電・産業機器・電源等)、SMT部品が少ないか熱に強い部品のみの基板、コスト最優先の生産。セレクティブはんだ付けが適する場合:SMTとスルーホールが混在する基板、高密度実装の基板、熱に弱いSMT部品やセンシティブな部品がある基板、品質と再現性を重視する用途、中量生産から少量多品種。近年はSMT主流によりスルーホール部品は減少傾向ですが、セレクティブはんだ付けの重要性は増しています。

POINT 02

セレクティブはんだ付けの4方式と主要装置メーカー

① セレクティブはんだ付けの4方式

①ミニウェーブ方式:小型のはんだ波を作り基板を相対移動させながら選択的にはんだ付けする方式です。連続的なはんだ付けに向いています。②ドリップ方式:ノズルから少量のはんだを滴下する方式です。ピンポイントでのはんだ付けに向いています。③ディップ方式:基板を上下させて特定の部分のみをはんだに浸す方式です。複数のリードを同時に処理できます。④ロボット方式:ロボットアームに搭載されたはんだごてやノズルで、プログラムに従ってはんだ付けする方式です。柔軟性が高く複雑な配置に対応できます。

② 主要装置メーカー

ウェーブはんだ付け装置:ERSA(ドイツ)・Rehm Thermal Systems(ドイツ)・SEHO(ドイツ)・KIRSTEN(スイス)・千住金属工業・TAMURA・Heller Industries・Vitronics Soltec・Folungwin(中国)などが主要メーカーです。

セレクティブはんだ付け装置:ERSA・Pillarhouse International・Vitronics Soltec・Nordson SELECT・PVA・JUKIなどが主要メーカーです。装置価格は数百万円〜数千万円のレンジです。

POINT 03

プロセスパラメータと品質管理

① プロセスパラメータの設定

フラックス:種類(VOCフリー・洗浄不要・ロジン系等)・塗布量・塗布方法(スプレー・ドロップジェット)を選定します。プリヒート温度:基板を均一に加熱し、はんだ付け時の熱衝撃を緩和します。一般的には100〜150℃です。はんだ温度:鉛フリーはんだの場合、260〜290℃が一般的です。温度が高すぎると基板や部品にダメージ、低すぎるとはんだ濡れ不良の原因になります。接触時間:ノズルとリードの接触時間です。短すぎると未はんだ、長すぎると熱ダメージや過剰はんだの原因になります。ノズルのサイズと形状:はんだ付けする部品のピッチと配置に合わせて選定します(ピンポイント用・グループ用等)。移動速度:生産性と品質のバランスで決定します。

② IPC-A-610品質基準と検査

接合品質の基準(IPC-A-610):スルーホールはんだ付けでは、はんだの上昇率(%)が重要な指標です。Class 2(民生・産業)では75%以上、Class 3(高信頼性・医療・車載・航空宇宙)では100%が要求されます。検査方法:外観検査(目視・AOI)・X線検査・断面観察(クロスセクション)を組み合わせます。代表的な不良モード:未はんだ・はんだボール・はんだブリッジ・不十分な濡れ・過剰はんだ・リード曲がり・はんだクラックです。

POINT 04

鉛フリー対応・トラブルシューティング・スマート化

鉛フリーはんだ(SAC305:Sn-Ag-Cu):鉛入りはんだ(Sn-Pb)より融点が高く(217℃ vs 183℃)ぬれ性がやや劣ります。プロセスパラメータの調整・適切なフラックス選定・温度管理が重要です。鉛フリーは銅食われが多いため、はんだ槽の銅成分管理も必要です。現代のはんだ付けはRoHSに対応した鉛フリーはんだが標準です。

トラブルシューティング チェックリスト:
①未はんだ・濡れ不良:原因=フラックス量不足・温度不足・接触時間不足・汚れ・表面処理の問題。対策=フラックス量・温度・時間・清浄度を見直す。
②はんだボール・ブリッジ:原因=フラックス過多・温度過剰・ノズルの位置ずれ・リード間隔の問題。対策=フラックスと温度の調整、ノズル位置の再調整。
③部品破損:原因=過剰な熱・急激な温度変化・機械的な力。対策=プリヒート・温度プロファイル・ハンドリングの見直し。
④スマート化の現状:近年の装置はIoT・AI機能を統合し、リアルタイム監視(温度・はんだ流量・不良率)・AI不良予測・リモート保守・データのクラウド集約・予防保全が標準化しつつあります。

まとめ

セレクティブ・ウェーブはんだ付けは、スルーホール部品を含む基板の量産で重要な実装技術です。ウェーブはんだ付けは大量生産向き、セレクティブはんだ付けは複雑な基板や高品質要求に向いています。装置選定・プロセスパラメータの最適化・IPC-A-610に基づく品質管理を通じて、信頼性の高いはんだ付けを実現できます。

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